長瀬かんなさん:サッカーチームでアスレティックトレーナーのインターンシップ

インタビュー

アスレティックトレーナーの勉強のため、大学卒業した年の秋にワーキングホリデーでドイツに来た長瀬かんなさん。マインツにあるサッカーチームでトレーナーとしてインターンシップをされています。

言葉や文化が違うなかでの苦労や発見、コミュニケーションを通して選手たちからの信頼を得るための努力の日々についてお話いただきました。

日本での経歴とドイツのワーホリを決めた理由

―もともとアスレティックトレーナーの経験がしたくてドイツに来たんですか?

そうです。アスレティックトレーナーの勉強ができるところを探してインターネットで調べていたら今お世話になっているマインツにあるサッカーチームがトレーナーを募集しているのを見つけて、日本にいる間に連絡を取りました。

 

「ぜひ来てほしい」ということだったのでそれがきっかけで「ドイツに行こう!」と決めました。監督が日本人なので、選手としても日本人が所属しているチームです。

 

―日本でもトレーナーとして働いていたんですか?

日本で体育大学を卒業して、その年の9月にワーキングホリデービザでドイツに来ました。

大学ではトレーナーをやりたい人向けのサークルに所属して3年間柔道のトレーナーを経験しました。一度就職活動もしたのですが、もっとアスレティックトレーナーについて勉強したい気持ちもあり、留学にも興味がありました。

ドイツに来てからの過ごし方

—ドイツに来てすぐの1ヵ月はハイデルベルクの語学学校に通われていましたよね。

はい。日本人の多い学校ですが、最初だからこそ日本人が多いのは助かりましたし友達もできたので、一番最初がハイデルベルクでよかったなと思います。ドイツらしいかんじの街ですしね。

 

―その後すぐブレーメンに移ってからの語学学校生活はどうでしたか?

ブレーメンはサッカーチームがある街ということで選び、2ヵ月間語学学校に通いました。

ホームステイ先の家庭もブレーメンチームのファンで、試合がある日は私のことも呼んでくれてみんなでテレビで見てました。

 

語学学校は勉強に力を入れているし、先生もスタッフもフレンドリーだしすごくよかったです。

授業の後にはクラスのみんなで映画やご飯食べにも行ったり、友達の家でピザパーティーをやったりすごく楽しかったです。

 

ブレーメンの街も私は好きでした。川沿いが一番のスポットみたいな何もない感じがいいなと思いました。大きくもないし汚い街でもないし、住むにはすごくいい街でした。

ブレーメンのお祭り

ブレーメンのお祭り

 

―その後数週間日本に帰国されて、サッカーチームでのトレーナーのためにフランクフルト周辺に移られたんですよね。お部屋探しに苦労されていましたが、無事見つかりましたか?

フランクフルト掲示板で、たまたま運よく見つけることができました。ただやはりフランクフルト内は家賃も高いですし家探し激戦なので、隣街のオッフェンバッハという街に住んでいます。

 

―今の生活の様子を教えてください。

フランクフルトの日本食レストランでのアルバイトもしています。

サッカーのシーズン中は、平日は毎日朝は語学学校、昼から夕方にかけてバイト、週2回夜のサッカーチームとでただただ毎日が過ぎていく忙しい日々を過ごしてきました。

サッカーはシーズン中だと週に1回練習、週に1回試合がありました。

今は入れ替え戦中で、日曜日と水曜日に試合が入っているので、週に4回はチームに通っています。

オッフェンバッハから練習グランドまではバスと電車で片道2時間かかるので、帰宅するとへとへとです。

フランクフルトのトラム

フランクフルトの街中

サッカーチームのトレーナー活動について

―長瀬さんの他にもチームにトレーナーはいるんですか?

トレーナーは私1人です。当初はもう1人日本人の方がいると聞いていましたが、いざ来てみたらその方はすでに辞められていて私1人でした。

 

―選手は何人いるんですか?

私が関わらせてもらっているトップチームには20人くらいの選手が在籍していて、1人で20人の対応をしています。

 

―1人で20人をケアするのは大変そうですね!トレーナーとしてどんなことをしているんですか?

リハビリの選手がいたら一緒にトレーニングを考えて、練習が終わったら選手のマッサージをします。だいたい毎回8人くらいのマッサージをするので、1人10~15分くらいで終わらせられるようにやっています。

選手を待たせてしまうとみんなの帰りが遅くなってしまうので、うまい具合で回せるように気を付けています。

試合の日は11人分の氷作ったりもしています。

 

―選手によって重点的にマッサージしてほしいところなどリクエストを言われるんですか?

言われます。言われたらそこを重点的にやりますし、何も言われなければ全身を軽くマッサージするかんじですね。

 

―練習時間はどれくらいですか?

選手は昼間働いている人が多いので毎回1時間半です。

夕方5:30から6:00開始で1時間半くらい練習しています。入れ替え戦中の水曜日の試合はみんな仕事終わりにくるので時間ギリギリになる人もいたり、仕事を早めに終わってくる人もいます。

所属はマインツの東側のリーグの7部所属で、入れ替え戦に勝てば6部に上がれます。

 

―マインツだけで7部もあるんですか!?街ごとにそんなにたくさんチームがあるんですね!

くわしいことはよく分からないですけど(笑)、サッカーチームは山ほどあります。

ドイツ人はみんな身近にサッカーがありますね。試合がある日はみんなマフラーまいて街にいますもんね。これから絶対スタジアム行くんだろうなっていう人たちで溢れています。その日のバーはみんなで応援ですごいみたいですよ。

 

―サッカーのトレーナーはドイツに来て初めての経験ですよね?柔道と違いますか?

柔道の怪我は主に指や肩ですけど、サッカー選手は足首や股関節の不調を言われるので、分からないことばかりで都度調べながらやっています。

試合にしても、柔道は1試合が長くても10分くらいで、1試合終わったら少し時間が空いてもう1試合ですけど、サッカーの場合は前半45分走り終わった選手に、10分間のハーフタイムで私に何ができるのかというのも考えますね。

柔道とサッカーでは怪我もテーピングも変わります。

日本にはポカリスエットなどのスポーツドリンクがありますけど、ドイツではそういうものがすごく高いです。選手によってはそういうドリンクを飲んでいる人もいるけど、みんなが常に買えるものではないので、水ですませている選手も多いです。

でも水だけでは失ったものを補えないので、ドイツでは何で補えるんだろうというのを調べて、はちみつレモンを作って食べてもらうなど、工夫しています。

「日本だったらこれができるのにな・・・」という場面はありますね。

 

―その他にも日本との違いを感じることはありますか?

色々なバックグランドをもった選手たちがいるので、宗教によって断食の期間がある選手もいる。そういうのを目の当たりにすると、本当に国によって文化が違うんだなと勉強になりますね。

ラマダン(断食)中は日が昇っているうちは食事できないので、自分から「今週は試合に出れない」とか「食べてないから練習できない」という選手もいます。

練習中の様子で「なんか元気ないな」と思っていたら「ご飯食べてないんだ」と言われた時は、アスリートでもラマダンを優先するんだ、ということに驚きました。

 

―落ち込むことはないですか?

選手たちが頼ってくれるので、何もできないのが一番申し訳ないです。

その場で答えられないときは、せっかく頼って聞いてくれたのにこの1回で信頼失うんだろうなって。そういう時は、帰宅してから調べてその日のうちに連絡するようにしたり、試行錯誤の日々です。

 

普通だったら教えてくれる人がいるものですけど、私は来てみたら1人だったので、最初の頃はプレッシャーで練習に行くのが憂鬱に感じたこともありました。

 

男子相手なのでなおさら、というのもありましたね。選手たちも「女子にマッサージしてもらうの?」みたいな戸惑いもあったでしょうし。最初はマッサージ受けに来てくれるのも3人くらいしかいなかったです。

必要だと思ったら呼んでくれればいいと思っていたので、選手から自主的に来てくれないと、あまり自分からいくことはしなかったですが、

 

何回か練習に行くようになってやっとコミュニケーションがとれるようになってきました。

「今日マッサージお願いしていい?」って言われると「よっしゃー!!」って嬉しくなりますね。

やっと馴染めてきたところでもうシーズンが終わってしまうのが本当に残念です。

努力とコミュニケーションでつかんだ選手たちからの信頼

トレーナーとして活動していたチーム

活動していたチーム

―国も言葉も性別も違う、3重苦だったんですね

そうですね。それでも日本人の選手の子が助けてくれました。日本人の子がマッサージを受けてたら「俺もいい?」ってドイツ人選手も来てくれるようになって。

最近ようやく余裕がもてたなと思えるようになりました。

ドイツ語で話しかけられてもなんとなく分かるし、「次誰がマッサージするの?」とか、そういうコミュニケーションがとれるようになりました。

前は「何言ってるの?」みたいな感じでなんとなくやっていましたけど、成長しました。

 

マッサージ始める前に、あおむけかうつぶせか聞くのをドイツ語で何て言うのか調べて言ってみたら「え?ドイツ語しゃべれるの?」って驚かれました。

ドイツ語をしゃべれた方が相手も嬉しいんですよね。いまでもジェスチャーも交えながら、知ってる単語並べてできる限りのドイツ語でコミュニケーションとっています。

 

逆に、ドイツ人の選手が日本語で「(体の部位が)カタイ?」とか「アリガトウ」を日本で言ってくれることもあって、ドイツ語と日本語でやり取りしています。

 

私の語学学校の宿題を教えてもらったこともありました。みんな優しい選手たちばかりです。

 

選手たちが挨拶のときに「ハロー」って握手してくれるんですけど、距離が縮まったことに嬉しさを感じて心の中で「ありがとう!」って思っています笑

最近は距離が縮まって、握手じゃなくてハイタッチしてます!

 

信頼を得るためにすごくがんばってきましたね、今思えば。笑っていることを常に心がけて、選手たちと仲良くなることが第一でした。

 

―今はもう1チーム通っているんですか?

フランクフルトのブンデスリーグの女子チームに通わせてもらっています。そこには日本人男性のフィジオセラピストの方がいて、その人がマッサージをしているのを見学させてもらっています。その方から直接、怪我のことなどマッサージ方法を聞けるので、頼れる人ができてとても勉強になっています。

日本とドイツでのトレーナーの違いについて

―日本とドイツでトレーナーの役割に違いがあるんですか?

ドイツではフィジオセラピストです。でもドイツのフィジオの人はマッサージしかしないみたいです。日本のトレーナーはマッサージもテーピングもリハビリも見るし、ウェイトの筋力トレーニングも見ますけど、ドイツは細かく筋トレ担当、リハビリ担当って決まっているみたいです。

 

―フィジオセラピストは日本語だと理学療法士かと思うのですが、日本の理学療法士はドイツのフィジオとは違いますか?

違うと思います。ドイツのフィジオはマッサージ、ケアというかんじですね。

ドイツでリハビリというと、逆にどの分類になるか分からないと言われました。チームではなく治療院での扱いになるのではないかとのことでしたね。

 

当初はリハビリが勉強したかったのですが、ドイツに来て求められることがケア中心だったので、マッサージする人も魅力的だなと思うようになりました。

「自分の手で体の重さが取り除けるとか、ひざが曲がるようになるってすごくない!!?」とドイツに来て考え方が変わりました。自分の手で直せるのはマッサージ特融だなと。

 

実際にマッサージしていても、「ここちょっと固いな」と思うと「そこ痛いです」って言われる。そういうとき若干成長できたなと思えますね。

今後の目標

ドイツでフィジオセラピストになるには、フィジオセラピーの学校かアウスビルドゥングです。

ドイツのカリキュラムはすごく実習時間が長い分、技術が高いんです。実習が長い分一人前でなんでもできる。

 

ドイツに残ってフィジオセラピーの勉強をすることも考えましたが、語学の面、金銭面があるので日本に帰ったら理学療法士の専門学校に行こうと思っています。

 

ドイツに来て新たに定まった目標です。

資格がないとこっちでもつうようしないということもありますし、もう一度日本でちゃんと一人前としてトレーナー活動してからまたドイツに来たらもっと違うことができるんじゃないかと思っています。日本でちゃんと勉強と現場で実習つんでから、サッカーチームの短期での研修でもいいのでまたドイツに来たいです。

松本 美香

ドイツ留学サポートセンターを運営しています。 11才の時に旅行で訪れたドイツの街並みに恋をして「いつかヨーロッパに住みたい!」夢を叶えるため20代後半でフラ...

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